味わい深い「お麩」の世界へようこそ

/ 更新日 / 2023.08.13

 

鈴木製麩所・鈴木浩一さん

山形の人にとってお麩は、馴染みのある食材のひとつ。煮物や味噌汁のほか、寒い時期の鍋料理にも欠かせません。昔は保存食や貴重なたんぱく源でもあったことから、控えめながらも身近な存在として、私たちの食卓で親しまれてきました。そんなお麩ですが、多くの人が思っている以上にポテンシャルが高い食材なのです。そもそもどのようにして作られ、どんな種類があり、食べ方があるのか。お麩のさまざまな魅力を探るべく、山形市内の老舗である〈鈴木製麩所〉を訪ねました。

山形市五日町にある〈鈴木製麩所〉は、「焼き麩」の製造を主力としながら、「生麩」や豊富なラインナップの加工品も製造・販売する明治44年創業の老舗。山形駅ビル内〈エスパル山形〉には直営店があり、県内のスーパーや観光物産会館でも取り扱いがあるので、商品を見かけたことがある人も多いはず。

四代目であり代表取締役社長の鈴木浩一さんは、大学卒業後、食品メーカーに勤務。その後Uターンし家業を引き継いだ。もとはこの地で長く農業経営に携わり、現社長である浩一さんの曾祖父の代からスタートした麩づくり。味噌屋さんや醤油屋さん、豆腐屋さんといったように、昔は「お麩屋さん」もそれぞれのまちに多く存在していたというが、今では麩の製造を行う業者も少なくなってきている。

「山形市出身の詩人、真壁仁さんの作品にもお麩屋さんの話が出てくるように、昔はそれぞれの集落ごとにあったので、まちには数十軒ほどもあったようです。弊社のある旧街道沿いにはお蕎麦屋さんや味噌屋さん、酒蔵などもあるのですが、このあたりは蔵王山系の地下水に恵まれている地域ということもあって、昔から製造業をしているところが多いんですよ。水って、麩づくりにもすごく大事なんです」

つづく