山形の魅力を伝えるために、
シアターサイドカフェをひらく

/ 更新日 / 2020.03.20

神保雅人さん

2018年春、映画館「フォーラム山形」の隣にシアターサイドカフェ「SLOW JAM(スロージャム)」がオープンした。山形の旬を味わえるフードやデザート、ドリンクメニューが揃い、オープン以来、映画やカルチャー好きの人を中心に賑わいをみせている。コンクリートの壁と木の床の空間には、風合いある花瓶や置物など個性的なアイテムがランダムに並ぶ。店内はどこかヨーロッパの蚤の市を彷彿とさせ、クラッシックでありながらどこか雑多な心地よさもある。ここは神保雅人さんのお店だ。

山形市で生まれ育った神保さんは、ファッション雑誌が大好きなカルチャー少年で「山形から早く出たい」と、高校卒業後すぐに上京。アパレル企業に就職し、ファッション業界の最先端で働いた。数年後にはワーキングホリデーでヨーロッパへ渡り、ロンドンを中心に各国を回った。

2011年、帰国した神保さんは東京で世界有数のブランドへの転職を決めたが、まもなく白血病が見つかった。時を同じくして東日本大震災が起きた。日本中が不安に包まれる中、半年ほど東京で入院生活を送った。闘病中、外泊期間を利用して地元に帰った。かつては好きになれなかった山形の景色は、違ったものに見えたという。

「朝採れの野菜のおいしさや、きれいな空気、真っ赤な夕日や、大きな山の連なり。僕が弱っていたからなのか、旬の力や自然の偉大さがカラダに染み込んできました。病気になってから、東京では下を向いて歩いていた。だけど、山形ではどんどん視界が広がっていくのを感じました」

山形の日常にある食文化や自然、暮らしの知恵。地元の人の「当たり前」が実はすごいことなのではないか。それなら、山形の魅力を自分なりの方法で伝えることができないだろうか。思いは日に日につのり、31歳でUターンを決めた。

photo:根岸功

(つづく)